Album songs：
Album Intro：
『馬耳東風』でデビューしたのが70年。新井英一の、ひたすら歌い続けてきた30年の重みは、聴き手の半端な精神を押しつぶそうとさえする。99~2000年にかけての国内のライヴで構成された『~ジャパン』でも、2000年秋のパリでのライヴを収録した『~パリ』でも、彼の歌の重さは変わらない。いや、ライヴだからこそ、その思いは強くなる。どこで、だれを前にしようが、ただ歌うだけ。それも、聴衆の向こうに存在する“自分”に向かって歌っているようだ。彼が相手にしているのは、己の魂の奥底で燃える“コリアン・ジャパニーズ”のアイデンティティなのだろうか。評者としては『~パリ』が、より面白かった。シャンソンという“枠”を内側からぶち壊そうとするエネルギーのすさまじさ。歌い手の情念を裸のままゴロンと投げ出すことによって、聴き手の心に施されたコーティングを削ぎ落とし、彼は常に“何か”に戦いを挑んできた。その対象は自分自身であり、聴き手は仮想敵でしかないのかもしれない。 (平原康司) --- 2001年05月号
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